年末調整の季節を通り過ぎて
年末調整は慌ただしく、面倒だ。
従業員、給与計算担当者、人事担当者、税理士などを忙殺させるものだ。
これまで勘違いしていたのだが、社会保険労務士は年末調整を
業務として受託することはできないのだと知った。
本題前に脱線、社会保険労務士は年末調整はできない
職域問題の決着
全国社会保険労務士会連合会と日本税理士会連合会は手打ちをしていた。
いわゆる職域問題が起きていた。
なんでも、平成14年に確認書なんてもので、全国社会保険労務士会連合会と日本税理士会連合会で取り交わされて一定の決着がついていた。
下記に確認書を引用しよう。
税理士又は税理士法人が行う付随業務の範囲に関する確認書
全国社会保険労務士会連合会及び日本税理士会連合会は、社会保険労務士法第27条ただし書及び同法施行令第2条第2号に基づく付随業務の範囲に関する協議において、下記のとおり意見の一致をみたのでここに確認する。
記
1 税理士又は税理士法人が社会保険労務士法第2条第1項第1号から第2号までに掲げる事務を行うことができるのは、税理士法第2条第1項に規定する業務に付随して行う場合であること。
2 (1)上記1にいう税理士又は税理士法人が付随業務として行うことができる社会保険労務士法第2条第1項第1号から第2号までに掲げる事務は、「租税債務の確定に必要な事務」の範囲内のものであること。
(2)社会保険労務士法第2条第1項第1号の2の業務(提出代行)及び同項第1号の3の業務(事務代理)は、付随業務ではないこと。3 付随業務に関して疑義が生じた場合は、その都度、全国社会保険労務士会連合会と日本税理士会連合会との間で協議の上、解決を図ることとする。
なお、年末調整に関する事務は、税理士法第2条第1項に規定する業務に該当し、社会保険労務士が当該業務を行うことは税理士法第52条(税理士業務の制限)に違反する。
以 上
(平成14年 資料:全国社会保険労務士会連合会より引用 赤字はペケイオ)
以上引用した確認書によれば、
税理士及び税理士法人は「労働社会保険諸法令に基づく申請書等」の
「労働社会保険官公署等への提出ができない」こと、
税理士などの「付随業務としての社会保険労務士業務範囲」は
「租税債務の確定に必要な事務の範囲におさめる」ようにということが明確になったのだった。
「租税債務の確定に必要な事務」って、要は税金に関わるものってことだろう。
そして、赤字部分のとおり、社会保険労務士は年末調整できないことが明確になっている。
参考条文:
-
第1章 - 第 2 条│Web税理士法
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-
第7章 - 第 52 条│Web税理士法
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職域まとめ
- 社会保険労務士法2条
社会保険労務士の職域は、労働社会保険諸法令に基づく申請書等の作成・提出代行・労務相談に関するもの - 社会保険労務士法施行令2条
公認会計士・税理士は、その業務のうち付随業務としての社会保険労務士業務の範囲に属するもの
年末調整の電子化・電子申告の実現へ
大幅に脱線してしまった。
本題は、年末調整手続の電子化だ。
年末調整の電子化は令和2年10月より
令和2年10月ごろ、国税庁は、保険料控除申告書などの
控除申告書を電子的に作成するためのソフトウェアを提供する予定なのだ。
マイナポータルを使ったものになる。
毎年、勤め人、事業主問わず、控除関係の書類を出してくれ、控除関係の証明書を添付してくれ、などの続きで慌ただしくなる。
そういったものから少しでも解放されるのだろうか。
面倒をまとめてみた。
年末調整をとりまく、関連当事者の面倒
年末調整はとにかく面倒だ。
従業員の面倒
- 書面により送付された複数の控除証明書等を保管する必要 面倒だ。
- 毎年、控除対象保険料額 等を集計・計算し 記載する必要 面倒だ。
個人事業主や会社の面倒
- 控除の証明書類7年間も保存が必要。面倒だ。
- 給与システムへの 入力事務が必要。面倒だ。
- 各種控除申告書計算誤り等について従業員に確認や訂正依頼せにゃならんぞ。面倒だ。
- 従業員が各種控除申告書のチェック、事務担当者のチェック。面倒だ。
税理士等の面倒
税務申告にかかわる付随業務だ。面倒なんていってられない。
でも、面倒だ。
よし年末調整だ。やるぞ。
資料をあつめて、年末調整ソフトを使って書類を作成する。
ソフトを使うとはいえ、面倒だ。
扶養親族に変更が!
提出先間違えた!
電子化オンライン申請を推進する政府
以上のような面倒が電子手続化によって、
少しでも関係者の負担軽減につながるのだろうか。
保険会社などの控除証明書等を出す事業体自体が
マイナポータル連携に対応していなければならないということもあり、
足並み揃えなければ意味がないような気がする。
マイナポータルってそもそも何か
行政手続きや行政からのお知らせの受け取りなどが可能になる
政府肝いりの事業。
PCから、ICリーダーを使ってマイナンバーカードを読み込み、
スマート専用アプリ「マイナポータルAP」アプリを使って、
「マイナポータル」にログインすることで利用可能となる。
マイナポータル連携って何?
マイナポータルは、政府が運営するオンラインサービスで、子育てに関する行政手続がワンストップでご利用いただけたり、行政機関からのお知らせを確認いただけます
e-Taxホームページより抜粋 マーカーは記事作成者による
マイナポータルでは、ぴったりサービスを展開している。
e-Taxは「子育て〜」と記載しているとおり、
現状、マイナポータルでは「子育て」に関するものが中心だ。
- 児童手当
- 保育
- 児童扶養手当
- 母子保健
それから「介護保険」
そして「就労証明書」
連携の手順はまあだいたい次のとおり。
- マイナポータルの開設(ICカードリーダライタを使ったパソコン、又は対応スマートフォンを利用)
- マイナポータルにアクセスし、利用者登録する
- マイナポータルと民間送達サービスの連携
マイナポータルを活用して保険会社等から電子データを取得するためには、「民間送達サービス」を利用する - マイナポータルの「もっとつながる」機能を使って民間送達サービスのアカウントを開設する
連携手続きに必要な準備
- マイナンバーカードの取得
マイナポータル連携には、マイナンバーカードに搭載されている
利用者証明用電子証明書
マイナンバーカードには署名用と証明用という電子証明書が
2種類搭載されている。
だが、これらは発行日から5年という期限付き。
又役所行かないとだめなのか。
- 読取機器の準備
マイナンバーカードを読み取るためには、「パソコン+ICカードリーダライタ」「マイナンバーカード対応のスマートフォン」
※NFC搭載のスマートフォンということらしい
11月8日現在
シャープ:Aquosシリーズ
富士通: Arrowsシリーズ
ソニー: Xperiaシリーズ
サムスン:Galaxyシリーズ
Apple: iPhoneシリーズ
最新の対応状況はつぎのリンクより確認。
iPhoneでマイナポータル
アンドロイドのNFC機能によるマイナポータルは実現していたが、
2019年、ようやくiOS13になってNFC機能が解放されたのだった。
-
マイナンバーカードもiPhoneで。iOS 13ではNFCによるIDスキャンがさまざまな国で利用可能に | ギズモード・ジャパン
日本政府やるな〜。東京での普及率も低く、政府も普及に乗り出しているマイナンバーカード。なんとiPhoneのNFCでマイナンバーカードの読み取りが可能になり、本人認証として使えるようになるようです。iP ...
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そして件のマイナポータルだが、
iPhoneでマイナンバーカードを利用してマイナポータルにログインできるようになった
2019年11月5日より開始。
マイナンバーカードの読み込み機能は、これまでパソコンとICカードリーダライタを使うか、Androidスマートフォンでの利用に限定されていました。
iPhoneでも利用可能となったのは、iOS13でNFC機能がサードパーティ製アプリでも利用可能となったため。
10月にはマイナンバーカードの記録内容を読み取ることができるアプリも
公開された。
ついでにWAON、nanaco、SuicaなどのICカードの
が公開されている。
民間送達サービスとは
電子データをインターネット上で受け取ることができる
民間企業のサービスとのこと。
野村総研のホームページに具体的なサービス名が上がっていた。
マイナポータルと連携する民間送達サービス「e-私書箱」を提供開始
これはその名前のとおり、いろいろな民間サービスの情報をマイナポータルという私書箱に集めるようなもの。「e」なので電子私書箱か。
銀行のほうがいろいろあった日本郵政グループ。
日本郵便はゆうびんポータルの「Mypost」と
マイナポータルを連携するようだ。
-
日本郵便株式会社 MyPost
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マイナポータルと生命保険会社の連携方法については、保険会社等により異なる可能性が
あるという。
手続きが保険会社間で、微妙に異なり余計に混乱しそうではある。
そうならないように、官民連携して、今後制度設計を続けるのだろうか。
あまり期待はできない。
保険会社についてのマイナポータルを使った流れは次の通り 具体的な方法については「保険会社」や「民間送達サービス」使う 事業体によって異なるんだと。
マイナポータルに対応を明言している保険会社はあるのか?
対応は必須なのだろうけど、明言しているところは現在なさそう。
確定申告は2020年(2019年の所得)からできるぞ スマホ+マイナポータルサイトで可能
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スマートフォンからより便利にe-Taxをご利用いただけるようになりました。 | 【e-Tax】国税電子申告・納税システム(イータックス)
国税電子申告・納税システム(e-Tax)の概要や手続の流れ、法令等に規定する事項など、e-Taxを利用して申告、納税及び申請・届出等を行うために必要な情報やe-Taxについてのお知らせを掲載しています ...
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スマホでやろうそうしよう。
令和2年の確定申告、つまり令和元年の申告分についてスマートフォンを使った。申告ができるのだ。
マイナンバーカードをスマホで読み取り、マイナポータルの「もっとつながる」機能から、確定申告書等作成コーナーを使うことができる。
ふるさと納税(寄付金だけど)を行う納税者は増えている。
総務省 ホームページ ふるさと納税に関する現況調査結果 より抜粋
確定申告不要のワンストップ納税を選びたく成るが、
特例申請の期日が結構、慌ただしい上、
住民税の控除にしか使えない。
確定申告は面倒だ。
じゃあお手軽にスマホで…となるのだろうか。
僕自身、一度試してみるか。